地方自治体にとってのふるさと納税
ふるさと納税は個人が気軽に取り組める税額控除制度です。
利用者の立場からすると、税額が控除された上で地方の特産品を手に入れられるため、非常に大きいメリットがあります。
しかし地方の立場からすると、実は嬉しいことばかりの制度ではありません。
私たちの生活が豊かになる嬉しい制度に隠された「ふるさと納税の問題点」について考えてみましょう。
ふるさと納税の問題点
ふるさと納税は寄付をする人にとってはメリットばかりの魅力的な制度ですが、リターンを用意する地方自治体側にとっては、私たちが想像しているより悩みの多い制度です。
これまでのふるさと納税で浮き彫りになった問題をふり返り、これから先のふるさと納税との向き合い方について考えていきましょう。
地域間の返礼品競争
ふるさと納税が抱える問題の1つとして「返礼品の競争」が挙げられます。
どの自治体に寄付しても同じ税額控除を受けられるのならば、寄付者としては少しでも豪華な返礼品を用意している自治体に寄付したいものです。
その心理を汲み取った一部の地方自治体は返礼品の豪華さを競い合うようになり、結果的に「地方自治体を応援してもらう」という趣旨からかけ離れた競争が行われました。
一部自治体への集中
前述の通り、返礼品の質によって寄付者の動向が変わります。
そのため人気の自治体と不人気な自治体が浮き彫りになり、一部自治体に寄付が集中する現象が見受けられました。
返礼品競争に負けてしまった一部の地方自治体では資金が増加するどころか減収するようになり、地域間格差が問題となったのです。
不公平の発生
人気の自治体と不人気の自治体が生じたことにより不利益を被るのは、住民です。
ふるさと納税に参加した住民は返礼品による恩恵を受けられましたが、参加できない住民はふるさと納税の実施により失われた税収の分だけ、公共サービスの品質低下の影響を受けてしまっています。
住民税の負担増
ふるさと納税を受け入れることで、地方自治体の金銭的な負担が増える実情も明らかになっています。それは「ワンストップ特例」が原因です。
利用者にとっては確定申告の必要がなくなる便利な制度ですが、この制度を用いることで国の負担が減り、地方自治体が住民税で補う必要がある負担が増えるという歪んだ結果を生じてしまいました。
寄付者も共存の道を模索する
ふるさと納税を利用する上で、私たちが被るデメリットは大きくありません。
ただし地方自治体にとってはデメリットも大きく、ふるさと納税が根本的な税収の改善策であるかというと、判断しきれないのも事実です。
私たちできることは少ないですが、ふるさと納税をするにあたり、住民1人1人が「地方自治体を応援する気持ち」という本質を忘れずに制度を利用することが求められているのではないでしょうか?